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 コアなファンを含め、根強い人気を誇る、三菱のオールラウンドミニバン、デリカD:5。今回、ディーゼル車を中心に大幅なマイナーチェンジを実施、2月15日に発売されました。ダイナミックシールドと呼ばれる三菱のフロントデザインコンセプトを採用することで、大胆で斬新なエクステリアに変貌を遂げました。また、新技術を随所に採用したドライブトレインにより、2022年に施行される予定の新燃費基準に対応しています。1969年のデリカバンの発売以来、誕生から50年を迎えたデリカ。大幅な変更を行った新型デリカD:5のクリーンディーゼル車について解説してまいります。

三菱のフロントデザインコンセプト、ダイナミックシールドを採用
 新型デリカD:5 の話題のうち、最も注目を集めたのが、大胆なフロントマスクではないでしょうか。 三菱のフロントデザインコンセプト、ダイナミックシールドのデザインを取り入れ、フェイスデザインは大幅に変更されました。三菱のグローバルデザインのダイナミックシールドは、これまでRVR やアウトランダー、エクリプスクロスなどに用いられてきましたが、新型デリカD:5 のような、強烈な存在感を示すケースは初めてといえます。そのデザインの中で最も目を引くのが、グリル左右に配された縦型のマルチヘッドライトです。なお、上部に配された、いわゆる“目”にあたる部分はポジションランプです。両灯ともLED を採用しています。
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 グリルの左右に配された 2列のヘッドランプ

新設計の2.2Lのクリーンディーゼルエンジン4N14
 エンジンは2.2Lのコモンレール式DI-D(ダイレクト・インジェクション・ ディーゼル)クリーンディーゼルターボエンジン4N14を搭載しました。欧州向けに開発され、その後国内用としてデリカD:5に採用された、もはやおなじみのエンジンですが、今回のマイナーチェンジにあたり、エンジンを構成する部品の約5割を新設計としています。とりわけ、エンジン摺動部の各部品については、形状などを変更し、製造された新たな部品が各所に使用しています。
 例えば、新設計されたインジェクターはソレノイド駆動部をノズル上に配置、コマンドピストンを廃止しました。これにより、アイドルストップ時の燃料リークを防ぎ、再始動の応答性を高めています。また、ピストン、ピストンピン、コンロッド、クランクシャフトも形状の変更や肉抜きなどによって軽量化を実現するとともに、低摩擦を実現することで、フリクションの低減に繋げています。この他、ベアリング類に低摩擦コーティングを施し、摩擦の緩和を図っています。
 この結果、トルクは、同車デビュー当初の360 N·m(36.7kgf·m)から380N·m (38.7kgf·m) /2,000rpmに増大しました。

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 大幅な改良を施した4N14型エンジン


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 低域の回転から太いトルクを発揮します

尿素SCRシステムを採用
 ドライブトレインの変更のうち、最も大きなトピックスは尿素SCRシステムの採用です。尿素32.5%の水溶液である無色・無臭の液体「AdBlue®」を用いて、ディーゼルエンジンが排出する窒素酸化物(NOx)を浄化する尿素SCRシステムは、有害物質である窒素酸化物(NOx)をアンモニア(NH₃)と化学反応させることで、窒素酸化物(NOx)を大気に無害な窒素と水に分解し排出。低燃費と高出力を両立し、クリーンな排出ガスを実現するというものです。
 国産車では大型トラックやバスで用いられる機会が多い尿素SCRシステムですが、今回デリカD:5に採用された背景には、2022年に施行が予定されている新燃費基準への対応があります。なお、容量16ℓの尿素水タンクは車両最後部に搭載。フィラーはラゲッジルーム内、左ホイールハウス後方に設置されています。


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 尿素SCRシステムを採用した新型デリカD:5のドライブトレイン

新開発の8速スポーツモードATと4WDシステム
 新型デリカD:5の走行性能を高めた要因のひとつに新開発のトランスミッションが挙げられます。従来の6速から8速とすることで変速比幅を拡大、また一速をローギヤード化させる改良により、低速域のトルクを増大させています。
 一方、4WDシステムは、モーグル路のような走行が困難になる状況での発進・走破性能を高める制御として、従来の4WDロックから4WDオートを増設。これにより、悪路走破性をさらに向上させました。

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 新開発の8速スポーツモードATを搭載

ステアリングはデュアルピニオン式に
 前モデルでは油圧式のパワステを採用してきたデリカD:5ですが、モデルチェンジ後は、電動パワステが採用されました。モーターなどのアシスト機能をハンドル軸と分離し、タイヤに近い位置にアシスト機構を配置するデュアルピニオン式のステアリングです。操作性、取り回し性などで、同車の評価が高いのは、このステアリングの変更に拠るところが大きく、新型デリカD:5のドライバビリティの向上に貢献しています。
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 デュアルピニオン式のステアリング構造

防音・遮音対策を徹底、フロアマットにも吸・遮音機能付きを採用
 近年のクルマ造りのうえで重要視されつつある静粛性の課題。新型デリカD:5では吸音、遮音対策が適材適所に盛り込まれています。遮音対策はフロントガラスやダッシュパネルなど7ヶ所、吸音対策は6ヶ所にも及んでいます。このうち注目を集めているのが、吸・遮音機能付きのフロアマットです。ロードノイズを低減するアイテムとしてディーラーオプションに設定されています。吸音層と遮音層の3層構造を持つ新設計のフロアマット。吸音層の有無による三菱自動車の実験では、60km走行時で、1.1dBの違いが見られました(下表)。

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                       静粛性対策の例



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 吸・遮音機能付きフロアマット

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画像:三菱自動車工業株式会社 プレスサイトより


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